滾々と湧き出る山のいで湯。そんな表現がぴったりとくるように、湯口パイプから注がれる温泉は加水・加温のない源泉100%かけ流し。

湯沢に来たらココしかない！

山の湯は越後湯沢温泉にある共同浴場。山小屋のようなロッジ調の外観が特徴的である。上越新幹線の開通後、一大リゾートとして開発された湯沢温泉であるが、昔の素朴な湯沢温泉の面影を残す佇まいは、他の共同浴場とは明らかに趣が違う。

例年は厳冬期から利用する山の湯だが、2015年は体調不良（軽い喘息）などもあり、新潟県のスキー場に足を運ぶことが3月下旬までずれ込み、この日が初湯。湯沢に来たら「ココしかない！」ほどに惚れ込んでいる｢山の湯｣に自然と足が向いた。

山々には残雪はあるが車道の雪は溶け、曇りがかっているため陽光は射さないが、ぴりりとした寒さはない。雪国のおそい春の到来を感じさせる。

「あ”～」魂のひとこと

駐車場空いているかな？ と思いつつ急なスロープを上がり、山の湯に到着。幸いにも数台の空きスペースがあって無事駐車完了。車から温泉セット（洗顔フォーム・タオル・下着）を取りだし、いざ参らんっ。

一年ぶりの「やまんぽちゃ」・・・なんだか妙に懐かしい。券売機に400円を入れ、発券された入浴券を管理人さんに渡す。毎年変わらぬ儀式だけど、「また来たな・・・」と、初回はいつも感慨深い。

貴重品ロッカーに財布や車のキーを入れて、脱衣所に向かうと、いつもの光景が見えてくる。厚いウェアを脱ぎ、まずは湯船ではなく、洗い場に直行。まずは「きたねぇ」身体をしっかりと洗わないとっ。

まるで昔の銭湯のように、シャワーのないカラン（お湯と水の蛇口）しかないけど、この不便さがいいんだよねぇ。温泉に入る前のセレモニーという感じがして。しっかりと頭から足先まで洗って準備完了！

湯船に身体を沈め無意識に出る「あ”～」のひとこと。コレだよ、コレ。この言葉を出したかったんだよなぁ。柔らかな丸みを帯びた本物の温泉。ちょっと熱いけれど、源泉100％かけ流しの極上温泉。形容する言葉はいくらでも出てくるけど、魂の叫び「あ”～」には敵わないだろう。

こんな温泉を一年間お預けだったなんて思うと、ずっと入っていたくなるが、無理な長湯は禁物。湯船に入っていると、さほど熱さを感じなくなるが、実際はそこそこ熱い。ちょっと長湯しようものなら、脱衣所で動けなくなるほどのぼせてしまう。

そのことは以前に経験済み。立ちくらみと大量の汗。正直なところ実に危なかったことがある。極楽温泉で極楽浄土に・・・なんてシャレにもならない。そう「ほどほど」、何事もほどほどが肝心。これが四十半ばで温泉で悟った人生訓である（苦笑）

地元に愛される「やまんぽちゃ」

ところで、この山の湯は、文豪、川端康成が雪国執筆のため湯沢に逗留した際に入った温泉と同じ源泉を引いている。地元の人々は愛情も込めて「やまんぽちゃ」と呼んでいるそうだ。湯沢温泉には数軒の共同浴場があるが、この「山の湯」は間違いなく最上級。どこにしようかと迷ったなら、この「山の湯」を特におすすめしたい。

隣接する温泉宿の｢高半｣と｢御湯宿 中屋｣と同じ湯沢本来の｢湯元源泉｣を楽しめるのは共同浴場ではここ「山の湯」だけ。一度入浴したら、この温泉の良さを忘れることはできないだろう。実際、私は湯沢・南魚沼あたりでスノーボードをした後は必ずといっていいほど利用している。

ただ設備的（露天風呂やシャワーの有無・休憩スペース広さなど）には、湯沢の他の共同浴場や日帰り温泉には敵わない。その点だけは留意したい。

冬季は臨時駐車場の利用を

ちなみに建物前にある駐車場は狭く、狭く急なスロープを登らなくてはならない。除雪用のスプリンクラーが作動しているので、雪でも上がることは可能だが、できるだけ左寄せで上り、大回りで右ハンドルを切らないと右後輪が空回りする。運転に自身がない人は、坂の下にある臨時駐車場を利用する方が無難だろう。

4月に入り、ぽかぽか陽気の春爛漫。まるでトルコアイスのようなゲレンデと戯れた後に再度訪問したが、やはり山の湯はいい。胸の違和感もふっ飛ぶほど幸せな気持ちに包まれた。

2014-2015シーズンは残念ながら不完全燃焼。来シーズンはどれだけ「やまんぽちゃ」に来れるだろうか・・・なんて辛気くさいことは考えない！ 喘息なんてぶっとばせぇ！

→　源泉かけ流し温泉ガイド | 温泉新選組のページ： 山の湯

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