久安の湯は歴史と風格を感じさせる男女交替制の大浴場

この温泉と出会えたことを感謝したい

蔦温泉旅館はブナの原生林が広がる八甲田山にある秘湯の温泉宿。ノスタルジックな歴史を感じさせる建物と、新しい増築部分との調和が美しく、ある種の風格さえ醸し出す。特に歴史を感じさせるい玄関は温泉宿らしいノスタルジックが漂う。

昔ながらの湯治宿の面影を残し、旅館のすぐ隣には生活雑貨・食品・お土産を扱う売店がある。昭和35年に建築された別館は、山の斜面に沿って階段が設けられ、一番上の階までの段数は60段を越える。客室から1階の浴場までの道程でも軽い散歩気分になるほどだ。

玄関から浴場までの廊下は、より一層宿の歴史を感じる。途中にある小さな階段の存在も雰囲気に調和。何とも言えない情緒を醸し出す。

浴場は男女入替の「久安の湯」と男女別の「泉響の湯」の2ヵ所。どちらも足元から湧出する足元湧出泉。湯船は新鮮な温泉にあふれている。

生まれたての鮮度のよい湯は湯温が高い（44℃～46℃）ためか、最初浴槽に体をつけた時に少しピリピリと刺激を感じるが、少し時間が経つと体が馴染み、心地よい極上の時間が流れる。

「泉響の湯」の天井は約12m。入浴しながら上を見上げると、梁の持つ日本建築の美しさを再認識。まるで体育館のような開放的な感覚というべきか。

夜の「泉響の湯」は幽玄の雰囲気に包まれるが、朝の入浴も格別。陽光が天井の隙間より差込み、新鮮でシャッキリとした熱い湯は眠っている体を気持ちよく目覚めさせてくれる。足元湧出のために飲泉はできないが、キリッと冷たい柔らかな山の水がとても美味い。

蔦温泉旅館は足元から自然湧出する新鮮で生まれたての本物の温泉に触れることのできる数少ない温泉宿の一軒。以前日帰り入浴で訪れた際、その温泉の鮮度と浴場の情緒に感激して「必ず宿泊しよう」と心に決めていたので、宿泊できたことが素直に嬉しい。

湯につかり天井を見上げていると、日本人に生まれこの温泉に出会たことを素直に感謝する気持ちが湧き上がってきた。「また来よう」と再訪を誓う、いや誓わざるを得ないおすすめの温泉宿である。

（2015.3 更新）

→　源泉かけ流し温泉ガイド | 温泉新選組のページ： 蔦温泉旅館

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